重度訪問介護のリアル|4年目の今でも二人きりの時間が一番怖い

介護の本音

「重訪って、医療ケアとかあって怖くないですか?」

最近よく聞かれます。
痰の吸引、胃ろう、ストーマ。確かに、最初は手が震えました。利用者さんの命を預かるって、こういうことかと。

でも、本当のことを言うと——
私が一番怖いのは、医療ケアじゃありません

利用者さんと、二人きりの時間です。

申し遅れました。Totchiと言います。
介護の仕事を始めて12年、重度訪問介護(以下、重訪)に移って4年。
介護福祉士の資格を取ったのも、ちょうど2年前です。

ぶっちゃけ、まだ「ベテラン」を名乗れる立場じゃないと思っています。
そんな私が、今でも怖いと感じる「二人きりの時間」について、書いておきたいと思いました。

重訪は「1対1の長時間」という特殊な仕事

まず前提を共有させてください。
重度訪問介護は、デイサービスや特養とはまったく違う仕事です。

1回の勤務で5〜8時間、時には夜勤を含めて12時間以上、利用者さんのお宅で二人きりで過ごします
仲間のスタッフはいない。先輩もいない。すぐに頼れる人は、その場にいません。

私自身、8年間デイサービスで働いていました。そのうち5年は施設長も務めました。
集団介護の現場には自信があったし、利用者さんへの対応も慣れていたつもりでした。

でも、重訪に移って気づきました。

同じ「介護」という言葉でも、重訪はまったく別の仕事だと。

その「別物さ」が、一番濃く出るのが——二人きりの時間なんです。

マニュアルに書かれない「4つの怖さ」

重訪に移って数年。
今でも怖いと感じる瞬間があります。私が感じる怖さを、4つに分けて書いておきます。

① 沈黙の時間が、ただただ長い

これは、重訪で働き始めた人なら、ほとんどが経験することだと思います。

私が初めて独り立ちで利用者さんのお宅に入った日のこと。
ケアと待機の時間が交互にある中で、待機時間は隣でじっと過ごすのが基本です。

その日は、特に何かお話することもなく。
頭の中では「何か話さないと」と思っているのに、何を話していいのかわからない
そのまま1日が過ぎた感じでした。

沈黙が怖いんじゃなくて、
「自分のせいで沈黙になっているんじゃないか」と思うのが怖い。

デイサービス時代は、周りにスタッフも他の利用者さんもいて、自然と会話が生まれていました。
重訪は違います。会話が生まれない時間が、平気で何時間も続く。
その時間を、利用者さんと二人で持ちこたえる。それが想像以上にエネルギーを使う仕事だと、今でも実感しています。

② きつい言葉に、動揺する自分がいる

重訪では、利用者さんから時にきつい言葉をもらうことがあります。

私自身、新人の頃は本当に上手くいかなくて。
ケアの途中で「痛い!」と言われたり、「何してるの!」と声を荒げられたり。

その時は、一瞬イラッとしてしまいました。
「こっちも一生懸命やってるのに」って。

でも、ひと呼吸おいて、まず謝罪する。
そして、次は同じ失敗をしないように改善を考える。
これを地道に繰り返すしかないんです。

研修中、先輩から「きついことを言われても、怒っているわけじゃないよ」と教わります。
頭ではわかる。でも、言われた瞬間の動揺は、頭では消せないんです。

新人が辞めていく理由の一つは、ここだと思っています。
「言葉を真正面から受けすぎてしまう」感受性の高さ。
これは弱さじゃなく、むしろ正常に働いている感覚なんです。

③ 判断が、自分一人にかかってくる

病院じゃない。施設じゃない。
重訪は利用者さんのお宅です。

何かあった時、その場で判断するのは自分です。
医者はいない。看護師もすぐには来ない。

「これくらいなら大丈夫」「これは報告すべき」
この判断の積み重ねが、毎日続きます。

独り立ちした直後、この「判断する責任」の重さに気づいて、急に怖くなる新人さんを何人も見てきました。
研修中は、横に先輩がいる。だから判断を共有できる。
でも独り立ちした瞬間、その安全網が消えるんです。

④ 利用者さんの「人生の重さ」が、そこにある

重訪は、長時間その方の生活そのものに関わる仕事です。

普段の会話の端々に、その方が背負ってきた人生が見え隠れします。
障害のこと、家族のこと、将来への不安、社会への怒り。

ふと出てくる一言が、その方の人生の重さを物語っていることがある。
そして、その重さを受け止めるのは、その時間そこにいる私一人です。

これは医療ケアの怖さとはまったく別物の、心理的な重さです。

「新人がすぐ辞める」のは、本当にメンタルが弱いから?

重訪の現場では、「最近の若い人はすぐ辞める」「メンタルが弱い」という言葉をよく聞きます。
正直に言うと、私自身も以前はそう思っていた時期がありました。

でも、ここまで書いてきた4つの怖さを、もう一度見返してください。

  • 沈黙の時間に「自分のせいか」と感じる
  • きつい言葉に動揺する
  • 判断を一人で背負う重さに気づく
  • 利用者さんの人生の重さを受け止める

これ、感受性が正常に働いている人ほど、深く感じるものなんです。

「メンタルが弱い」じゃない。
むしろ、人の感情に敏感で、責任感が強くて、想像力がある人ほど、独り立ち直後に折れやすい。

私が現場で見てきて思うのは、続けられる人と辞める人の違いは、能力ではないということです。
能力以前に、「最初の数週間を乗り越えるサポートを受けられたかどうか」の差が大きい。

私自身、「辞めたい」と思ったことがあります

私もこの数年で、何度も「もう辞めたい」と思った瞬間がありました。

休みが取れず、働きづめだった時期。
利用者さんから怒られた時。
ケアが上手くいかなくて、自分の力不足を突きつけられた時。

「流石にもう無理かも」と思いました。

でも、続けてこれた理由は、たぶんすごくシンプルです。
「私が抜けたら、利用者さんに迷惑がかかる」という気持ち。

大きな志があったわけじゃありません。立派な使命感でもありません。
ただ、目の前の利用者さんのことが頭に浮かぶ。
その気持ちで、なんとか踏ん張って、少しずつ技術を上げてきました。

続けてよかった、と思える瞬間も確かにある

もちろん、辛いことばかりじゃありません。

最初は不機嫌だった利用者さんが、
じわじわと信頼関係を築けていく感覚。

「ありがとう」が増えていく日々。
名前を呼んでもらえるようになる瞬間。
「あなたで良かった」と言ってもらえた時の、心の奥が温かくなる感覚。

時間がかかっても、利用者さんとの関係性は、確かに育っていく。
これは、重訪という仕事だからこそ味わえる手応えだと思います。

1対1で長時間関わるからこそ、関係性が深くなる。
集団介護では味わえない、この仕事ならではの喜びがあるのは事実です。

読んでくださっているあなたへ

ここまで読んでくれた方の中には、いろんな立場の人がいると思います。
それぞれに、メッセージを書かせてください。

これから重訪を志す人へ

怖いと感じるのは、おかしいことじゃありません。
むしろ、「怖い」と感じる感受性こそが、利用者さんに寄り添う力になります

準備して、サポートのある現場を選んで、ゆっくり慣れていけば乗り越えられます。
「弱いから怖い」のではなく、「正常だから怖い」。これだけは覚えておいてほしいです。

今、現役でしんどい人へ

現場で働いている私も、まだ怖いと感じる瞬間はあります。
「慣れれば大丈夫」なんて、簡単には言えません。

でも、あなたが弱いんじゃない
重訪という仕事の特殊さに、まっすぐ向き合っているからしんどいんです。
一人で抱え込まず、信頼できる先輩や同僚に話してみてください。

辞めた人、辞めようか迷っている人へ

続けることだけが正解じゃありません。
自分の心と体を守るのは、何より大事です。

私自身、もし今の現場が本当に合わないと感じたら、別の働き方を探していたと思います。
同じ介護でも、施設・訪問・夜勤の有無・1対1か集団かで、仕事の質はまったく違う。
合わない場所で消耗するより、自分に合う場所を探す方が、利用者さんのためにも、自分のためにもなる。

もし環境を変えることも視野に入れているなら、介護職に特化した転職サービスを使うのも一つの方法です。
私もこういうサービスをチェックすることがあります。求人を眺めるだけで「こんな働き方もあるんだ」と気持ちが楽になることもありますから。

どの選択をしても、自分を責めないでほしい。
それが、現場で続けている私からの本音です。

最後に

重度訪問介護のリアルを、なるべく書きました。

医療ケアの怖さは、技術と経験で乗り越えられます。
でも、「利用者さんと二人きりの時間」の怖さは、技術じゃ消えない
それは、この仕事の本質に組み込まれている、別種類の重さだからです。

もしあなたが今、その怖さを感じているなら——
あなたは決して、弱いわけじゃありません。

むしろ、利用者さんの人生に、正面から向き合おうとしている証拠です。

怖いと感じる自分を、認めていい。
それが、この仕事を続けるための、最初の一歩だと思います。

次回は、この「二人きりの時間」とどう向き合うか、私なりの工夫について書いてみたいと思います。


Totchi(トッチ)
介護職12年(うちデイサービス8年/重度訪問介護4年)。
介護福祉士・重度訪問介護支援員。
現役で重訪に従事しながら、現場のリアルを発信中。

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